視覚障害学生のリアルな声から考える、これからの情報提供

~誰もが自分に必要な情報を得られる社会へ~
2026年9月、日本で唯一の視覚障害・聴覚障害がある方のための大学である筑波技術大学(茨城県つくば市)にて、共生社会創成学部共生社会創成学科視覚障害コースの学生さん(弱視4名、全盲1名)向けにワークショップを実施し、「本当に必要で、伝わりやすい情報提供のあり方」を共に考える機会をいただきました。
日常で手にする商品パッケージを題材に、日頃の困りごとや情報を得るための工夫について伺いました。そこで語られたのは、当事者だからこそ直面している「情報取得のリアルな壁」です。
この貴重な声を私たちだけの取り組みに留めるのではなく、メーカーや業界関係者の皆さまと広く共有し、誰もが必要な情報を得られる社会づくりへつなげていきたいと考えています。
本記事では、学生の皆さんから寄せられた率直な声をご紹介します。こうしたリアルな課題をどのように商品開発や情報提供の改善へつなげていけるのか、皆さまとともに考え、一丸となって取り組むきっかけになれば幸いです。
1.「情報が多すぎて見つからない 」というバリア:優先順位と整理の必要性
弱視の学生の多くは、スマホの拡大機能や画像認識機能など様々なツールを活用していますが、パッケージやデジタル上の案内には以下のような壁があることが分かりました。
【当事者のリアルな声】
●「賞味期限やアレルギー表示など、健康に関わる必須情報が小さくて見えない、またはどこにあるか分からないことが多々あります。たくさんの情報の中から自分が知りたい情報を探し出すのに苦労しています。」
●「パッケージにQRコードがいくつも付いていると、どれを読み取ればよいか分からず、使う気になりません。」
●「美術館などの音声案内は長すぎることが多いです。概要と詳細を分けてほしいです。」
●「Web上でも、音声読み上げや視認性の面で、視覚障害のある人にとってまだまだアクセシブルではないサイトが多いと感じます。」
●「すべての商品で、商品名をわかりやすく表示して欲しいです。文字のサイズをもう少し大きく表示してもらうと認識できることも多いです。また点字が必要な方も多いので、少なくとも商品名については、是非わかるように表現して頂きたいです。」
【当事者の声から見えた改善のアプローチ 】
消費者にとって一番大切な情報(商品名・アレルギー表示・賞味期限・用途)がひと目で伝わるよう、パッケージ上の表示優先順位を整理し、文字サイズやコントラストで「強弱(メリハリ)」をつけることが、まずは大切になりそうです。また、点字で商品名がわかるような配慮も喜ばれるポイントです。
さらにデジタル情報においても、「まずは概要」「次に詳細」と段階的に情報を整理しておくことで、画面拡大や音声読み上げを使っている方でも迷わず必要な情報にたどり着きやすくなります。二次元コードを付ける場合は、読み取ると何を知ることができるのかを知らせることも大切です。
2.「付けるだけ」で終わらない工夫:触覚サイン普及の課題
良かれと思って施した工夫でも、実は当事者にとって十分に機能していないケースもあります。
【当事者のリアルな声】
●「ドレッシングのキャップに『ドレ』と点字があるのは助かりますが、〈何味か〉までは分からないため、結局一人では選べません。 」
●「牛乳パックの「切り欠き」は、それが牛乳を意味すると知っている人には便利ですが、そのルールの意味を知らなければ、情報として機能しないです。(主婦層には知られていても、若年層の当事者は知らないケースもあります。 )」
●「触って分かる目印を付けるだけでなく 、初めて触っても理解できるデザインになっていることや、その目印の存在自体を周知することが重要だと思います。」
【当事者の声から見えた改善のアプローチ 】
点字や凹凸などの触覚サインは大切な取り組みですが、限られたスペースですべての詳細(味や種類など)を伝えるのは難しい面もあります。そこで、音声で詳細を読み上げられる二次元コードなどを組み合わせる「アナログ+デジタル」の工夫を取り入れてみるのも一つの手立てです。
あわせて、牛乳パックの切り欠きをはじめとする各種マークの「意味や存在」そのものを、若い世代も含めて広く社会に知ってもらう取り組みも、メーカーや業界全体で一緒に育んでいきたいところです。
3.「本当は、自分で選びたい」:人に頼らずに商品を探せる仕組み
店舗で目当ての商品を探す際、多くの方が「店員に聞く」「家族や友人に頼る」そうです。しかし本音では「毎回わざわざ聞くのは気疲れする」「自分の力で見つけたい」という葛藤を抱えています。
【当事者のリアルな声】
●「一番困るのは、商品の場所を見つけること。店員さんに聞くこともありますが、本当はわざわざ聞きたくありません。最近は店員さんを探すのも苦労します。」
●「人に頼れない状況や、自分で選びたい時もあります。事前にWEBで細かく調べたり、スマホの画像認識を使ったりしますが、必要な情報を選ぶのが大変です。」
【当事者の声から見えた改善のアプローチ 】
自分で商品を探して選ぶプロセスには、「(1)店内のどこに商品があるかを見つけること」と、「(2) 手に取った商品の詳細を知ること」という2つのハードルがあります。
手に取った商品の識別については、パッケージの読み取りやすい位置に二次元コードを配置し、味や使い方などの詳細を音声で確認できるようにするデジタル連携も対応の一つです。
一方で、店内のどこに商品があるかを見つけるためには、視覚に頼らないマップや看板の提示方法を工夫する必要があります。例えば、スマホの音声ナビゲーション連携や、売り場を知らせる音声発信機、床面サインなど、視覚に頼らず目的の棚に近づける環境を整えていく工夫が役立ちます。
店舗の規模や環境によって最適な方法は異なるため、現場でできることから一つずつ、メーカーや小売店が一緒に模索していけると良さそうです。
4.【番外編】外出先での困りごと
ワークショップでは、商品情報についてだけではなく、日常のさまざまな場面についても話題にあがりました。本編から少し逸れますが、日常生活の中でも、例えば以下のような場面で情報を得るのに困っているそうです。
・ホテルの客室: 一人で宿泊する際、照明スイッチやコンセントの位置、アメニティの種類などが分からず苦労する。
・お祭りの屋台: どこに何の屋台があるか、商品がどのような状態(袋入りかそのままか等)で渡されるかが分からず不安を感じる。
・施設・交通機関: 映画館やライブ会場、電車の「指定席」を一人で探すのがいつも難しい。
5.あらゆる人が「自分で選べる」社会を共に創る
今回のワークショップを通じて見えてきたのは、視覚に障害がある方々が日常で直面している「情報にたどり着けない」「情報が多すぎて探せない」というリアルな困りごとでした。必要なときに支援を受けられることに加え、自分自身で情報を得て、納得して商品を選べる環境への強いニーズが感じられました。
これらを解決する一つの正解があるわけではありませんが、届いた声に耳を傾けてみると、これからの商品づくりや情報提供をより良くするための大切なヒントが見えてきます。
私たちが提供するアクセシブルコード(Accessible Code®)は、こうしたヒントや当事者の声をもとに、 誰もが必要な情報へ平等にアクセスできる仕組みを目指して開発を続けています。また、当事者の切実な声をメーカーや事業者の皆さまへしっかりと届けるとともに、より良い商品・情報提供のあり方を「ともに考え、アップデートしていく」パートナーでありたいと考えています。









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